イノベーションのジレンマ 第7章-2:新しい成長市場を見いだす

事例:ヒューレット・パッカード

ヒューレット・パッカード(HP)が、革命的で破壊的な1.3インチ・キティホーク・ディスク・ドライブの市場を開拓しようとしたとき、破壊的技術の予測が極めて難しいことが障害となった。

1.3インチという小型ディスク・ドライブには「PDA」という大きな市場が見えており、製品そのものも顧客のニーズを反映したものであった。キティホークの技術開発は予定どおり進んだが、PDA市場は思うように実現せず、キティホークは発売から2年間で予測の数分の1の売上しか達成できなかった。キティホークの売上に最も寄与したのは、いずれも当初のマーケティング計画には入っていない分野ばかりであった。

家庭用テレビゲーム・システムから大量購入の打診を受けるが、それはモバイル・コンピューティング用に開発されたキティホークの性能を十分に発揮できる用途ではなかった。家庭用テレビゲーム・システムに必要な小型ディスク・ドライブは、安価で機能も限定された破壊的な製品であった。しかし当時のHPには、市場の用途に合わせてキティホークを設計し直す体力がなく、対応することができなかった。結果として、キティーホークは発売から約4年半で市場から撤退した。

破壊的技術では、どのような顧客がどの程度の量を必要とするのか、自分たちにも、他の誰にもわからないという想定のもとでプロジェクトを進める必要がある。そうすれば、製品の設計も生産設備への投資も様子をみながら柔軟にアプローチすることができる。手さぐりで市場に参入し、必要に応じてプログラムの方向を変えるための資源を残しつつ、その過程で学んだことをもとに将来を築いていくべきである。

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