イノベーションのジレンマ 第8章-5:組織にできること、できないことを評価する方法
組織の規模が巨大であることは、イノベーションを進めるにあたっては、無能力の要因にほかならない。また企業が大きく複雑になるほど、上層部のマネージャーがあらゆるレベルの従業員を教育し、企業の戦略や事業モデルに合った優先順位を決定できるように育てることが重要になる。優良経営を示す重要な指標の1つは、一貫性のある明確な価値基準が組織全体に浸透しているかどうかである。
ディスク・ドライブ業界の歴史においては、116種の新技術のうち111種が持続的技術、5種が破壊的技術であった。当時業界をリードしていた企業が破壊的技術を用いて成功した例は、一社もなかった。持続的技術と破壊的技術で、なぜこれほど成功率に差が出るのだろうか。
破壊的イノベーションは断続的に発生するため、それらに対処する慣例的な「プロセス」を持っている企業など存在しない。さらに、破壊的製品は1個あたりの利益率が低く、最上層の顧客には使われないため、優良企業の「価値基準」には合わない。大手ディスク・ドライブ・メーカーには、持続的技術でも破壊的技術でも成功できるだけの「資源」、すなわち人材・資金・技術があった。しかし、そのプロセスと価値基準が、破壊的技術で成功する上で無能力であった。