イノベーションのジレンマ 序章概要

研究目的
優良企業が失敗するのは、経営者が「破壊的イノベーションの法則」を無視したか、この法則に逆らったからである。

クリステンセン教授の仮説
破壊的イノベーション(破壊的技術からもたされるイノベーション)こそが業界のリーダー企業を失敗に追い込んだ要因である。

破壊的イノベーション理論の前提条件
「持続的」技術と「破壊的」技術の間には、戦略的に重要な違いがある。
技術進歩のペースは、市場の需要が変化するペースを上回ることが多い。
成功している企業の顧客構造と財務構造は、その企業がどのような投資を魅力的と考えるかに重大な影響を与える。

破壊的技術の5つの原則
原則1:企業は顧客と投資家に資源を依存している
原則2:小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない
原則3:存在しない市場は分析できない
原則4:組織能力は「無能力」の決定的要因になる
原則5:技術の供給は市場の需要と等しいとは限らない

定義
持続的技術
性能の向上を持続する技術で、漸進的な改良から抜本的なイノベーションまで多岐にわたるもの
製品の性能を高める新技術
主要市場のメインの顧客が今まで評価してきた性能指標に従って、既存製品の性能を向上させる
各業界における技術進歩は、持続的な性質のものがほとんどである
最も急進的で難しい持続的技術でさえ、大手企業の失敗につながることは滅多にない

破壊的技術
性能の軌跡を破壊し、塗りかえる技術で、幾度となく業界の主力企業を失敗に導いくもの
従来とはまったく異なる価値基準を市場にもたらす技術
破壊的技術は、短期的には製品の性能を引き下げる効果を持つイノベーションであり、従来とはまったく異なる価値基準を市場にもたらす
破壊的技製品は低価格、シンプル、小型で、使い勝手がよい場合が多く、主流から外れた少数の、大抵は新しい顧客に評価される特長がある
破壊的技術が大手企業を失敗に導く

持続的イノベーションと破壊的イノベーションの影響
図0-1. 持続的イノベーションと破壊的イノベーションの影響
技術革新のペースがときに市場の需要のペースを上回るため、企業が競争相手よりすぐれた製品を供給し、価格と利益率を高めようと努力すると、市場を追い抜いてしまうことがある。
破壊的技術の性能は、現在は市場の需要を下回るかもしれないが、明日には十分な競争力を持つ可能性がある。
破壊的技術は、最初は市場で最も収益性の低い顧容に受け入れられる。

表0-1. 破壊的技術
既存技術(すでに確率された技術) 破壊的技術
ハロゲン化銀写真フィルム テジタル写真
固定電話 携帯電話
回路交換電気通信網 パケット交換通信網
ノート・パソコン 携帯デジタル端末
テスクトップ・パソコン ソニープレイステーション、インタネット端末
総合証券サービス オンライン証券取引
ニューヨーク証券取引所、NASDAQ証券取引所 電子証券取引ネットワーク(ECNs)
手数料制新株・債券発行引安 インターネット上のダッチ・オークション方式によるサービス新株・債券発行
銀行上層部の個人的判断による信用決定 信用スコア方式による自動融資決定
ブリック・アンド・モルタル式の小売業 オンライン小売業
工業原料流通業者 ケムテックス、EスチールなどのWebサイト
印刷された挨拶状 インターネットでダウンロードできる無料挨拶状
電力会社 分散発電(ガス・タービン、マイクロ・タービン、燃料電池)
経営大学院 企業内大学、社内マネジメン卜研修プログラム
キャンパスと教室での授業 主にインターネットを利用した遠隔教育
標準的な教科書 カスタム・メイドのモジュール型テジタル教科書
オフセット印刷 デジタル印刷
有人戦闘機・爆撃機 無人航空機
Microsoft WindowsとC++で開発されたアプリケーション インターネット・プロトコル(IP)とJavaアプリケーション
医師 開業看護婦
総合病院 外来診療所、在宅医療
外科的手術 関節鏡・内視鏡手術
心臓バイパス手術 血管形成術
磁気共鳴断層検査(MRI)とコンビューター断層検査(CT) 超音波断層検査(最初は大型装置、のちにポータブル装置)

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