イノベーションへの解 第8章 概要
戦略のポイント
正しい戦略を見出すことに力を入れるよりも、戦略策定に用いられるプロセスを上手にマネジメントした方が成果が出やすい。
戦略が定義され実行されるプロセス

意図的戦略
意図的戦略(意図的戦略策定プロセスを通して生まれた戦略)とは、意識的で分析的なもので、市場成長率、市場分野の規模、顧客のニーズ、競合企業の強みと弱み、技術曲線などに関するデータ分析をもとにしていることが多い。
一般的にトップダウンで実行に移される。
意図的戦略による組織化
戦略は、成功のために必要なすべての重要な詳細を網羅し、それに対処していかなければならない。
戦略の実行責任者は、経営幹部の意図的戦略の重要な部分をすべて理解していなければならない。
組織が集団行動を取るためには、戦略が経営トップだけでなく、全従業員にとって理にかなったものでなければならない。そうでなければ、全員が首尾一貫した適切な行動を取ることができない。
集団の意図は、外部からの政治的・技術的な力や市場動向などの予期しない影響を、極力排除しつつ果たされなければならない。
創発的戦略
創発的戦略(創発的戦略策定プロセスを通して生まれた戦略)は、従業員が優先順位や投資などについて日常的に下す決定の積み重ねである。
将来を予見することが難しく、何が正しい戦略かはっきりしないような状況では、創発的プロセス主導で戦略を策定することが望ましい。
必勝戦略が明らかになれば、今度は意図的戦略策定プロセス主導で、戦略を策定しなければならない。
戦略が定義され実行されるプロセス

資源配分プロセスは、どの戦略に資金を与えて実行に移し、どの戦略に資源を与えないかを決定する。
資源配分プロセスで優先順位の決定を導く価値基準が、企業の意図的戦略と連動している。
一つひとつの資源配分決定が、企業の現実の行動を形づくる。
資源配分プロセスと価値基準
資源配分プロセスを強力に突き動かしているのは、組織の「価値基準(経営者や従業員が優先順位付けの決定を下す際の判断基準)」である
中間管理職がどのアイデアを推進し、どのアイデアを放置するかを決定するために用いる「価値基準」が、資源配分プロセスの帰結を大きく左右する。
上層部が資金投入の意思決定を下す際に用いる価値基準も、資源配分プロセスに大きな影響を与える。
価値基準に影響を与える要因
コスト構造
規模の闘値(しきいち)
事業成功のポイント
成功者たちがやり遂げられるのは、当初の戦略に欠陥があることが判明した場合に備えて、再試行するための資金を残しておくからである。
新事業の初期段階に上層部が果たすべき役割の一つは、何が有効で何がそうでないかを創発的な事象から学び、学習したことを意図的なチャネルを通じてプロセスへと循環させることである。
創発的戦略
有効なパターンや一貫性を追求しながら、一つひとつ行動を起こして、何が有効かを学習していくこと。
有効なパターンを読み取り、資源配分プロセスの判断基準を掌握したら、戦略策定の流れを意図的に策定する段階にシフトしなければならない。
戦略のポイント
創発的戦略から意図的戦略への切換がうまくいくかどうかが、破壊的事業の成否を分ける。
新しい破壊的成長の波を捉えようとする企業の取り組みは、創発的戦略によって導かれなければならない。
主流事業を推進するにあたっては、競争力と収益性を維持するための持続的イノベーションを導く、意図的戦略を用いる必要がある。
意図的戦略が破壊的事業の障害になる理由
成功した企業の資源配分プロセスのフィルターは、成功を導いた戦略に連動するようになるため、既存事業を支える計画以外のもの(破壊的イノベーション)をすべてふるい落とすようになる。
意図的戦略プロセスが組織に組み込まれてしまうと、次に新事業を立ち上げるときに、創発的プロセスを再び用いることが難しくなる。
戦略プロセスと資源配分プロセス
戦略を定義して実行するためには、戦略プロセスと資源配分プロセスが作用する状況を、適切にマネジメントする必要がある。
戦略策定プロセスのポイント
新成長事業の当初のコスト構造によって、優先順位付けや資源配分の決定を導く、価値基準や判断基準が決まってしまう。
事業計画では「発見志向計画法」などの手段を通じて重要な仮説を必ず検証し、有効な戦略を生み出すプロセスを積極的に加速させる。
一つひとつの事業に繰り返し直接関与し、それぞれの状況に応じて創発的戦略と意図的戦略のどちらに従うべきかを判断する。戦略策定プロセスの選択を、規定や習慣、文化任せにしてはならない。
資源依存
“組織の能力と無能力を支配するのは外部の存在である”、“顧客と投資家が組織の存続に必要な資源を提供する”という考え方。
資源依存に対抗して変革をマネジメントする手段は、破壊的製品を高く評価する別の資源提供者に依存できるような、独立組織を構築することである。
資源のポイント
新事業が単純な製品によって無消費に対抗する唯一の方法は「無消費のような顧客や製品を経済的に魅力あるものと捉えるコスト構造」を構築することである。
創発的戦略プロセスをマネジメン卜するための発見志向計画法
| 持続的イノベーション:意図的計画法 | 破壊的イノベーション:発見志向計画法 | ||
|---|---|---|---|
| 特徴 | パターン認識に基づいてプロジェク卜開始を決定する | 数字や規則に基づいてプロジェク卜開始の決定を下しても構わない | |
| 段階 | 1 | 仮説(将来予測)を立てる | 財務目標を打ち出す |
| 2 | 仮説に基づいて戦略を策定し、戦略に基づいて財務予測を立てる | 仮説を証明するためのチェックリストを作成する | |
| 3 | 財務予測を基に投資決定を行う | 重要な仮説の妥当性を検証するために、学習計画を実行する | |
| 4 | 財務予測を実現するために戦略を実行する | 戦略を実行するために投資を行う | |
新事業が有効な戦略を見出す間に「発見志向計画法」を用いれば、試行錯誤を漫然と繰り返すよりも、有効な戦略をはるかに早く、かつ目的を持って生み出す手助けができる。
発見志向計画法
創発的戦略プロセスを積極的にマネジメントするための手段。
発見志向計画法を用いると「組織が要求する数字を実現するための計画には、それを裏付けるような妥当な仮説がない」ということが早い段階で判明する。
発見志向計画法と意図的計画法では、段階の順序が異なる。
重要な仮説の妥当性を検証するための学習計画では、最も重要な仮説の妥当性を確認する、または無効にするような情報を、迅速かつなるべく費用をかけずに収集しなければならない。
それができれば、第四段階が始まる前、つまり多額の投資を通じて戦略を実行する以前に、戦略の手直しができる。
事業失敗の理由
有効な戦略が現れ、実行する時がきたならば、積極的に意図的戦略モードに切り替えて、創発的戦略への資金提供を中止しなければならない。
経営者は「過去に成功した創発的戦略プロセス」についての記憶を失い、新しい組織で成長事業に取り組むときには、戦略プロセスを創発的戦略モードにリセットし忘れ、新事業の立ち上げに失敗する。
戦略のポイント
正しい戦略を求めるだけでなく、戦略が生み出されるプロセスをマネジメントすることが重要である。
戦略の始まりとなる「意図的戦略」と「創発的戦略」は資源配分プロセスを通って戦略の実行に至る。
持続的イノベーションと一部のローエンド型破壊では、戦略を意図的に策定し実行に移すことが可能である。
新市場型破壊の創生期ポイント
組織のコスト構造
価値基準をマネジメントし、理想顧客からの破壊的製品に対する注文が優先されるように図る。
発見志向計画法
何が有効で何がそうでないかについての学習を加速させる、徹底したプロセスを用いる。
プロセスの監視
意図的、創発的プロセスが各事業の状況に応じて用いられるよう、油断なく気を配る。