イノベーションの最終解 序章-6
過去が将来予測のよい判断材料になるのは、将来の状況が過去の状況に似ているときに限られる。過去のデータやベストプラクティスをもとにして、将来に関する決定を行おうとしても、決定的な定量的データが手に入る頃には、その結論をもとに行動を起こすのは手遅れである。
現状を正確に理解し、将来を予測するには、理論のレンズを通して将来を見るとよい。優れた理論は、データが不足しているときでも、重要な動向を理解するための確実な方法を与えてくれる。また理論を使えば、重要な動向が起こっていることを指し示すシグナルを明らかにし、その動向が業界のプレーヤーに与えるであろう影響を説明することができる。
理論を正しく用いれば、未来に関する洞察を過去から引き出すことができる。しかし、イノベーションの理論に埋め込まれた考えの多くは単純に思われる一方、これらの理論を予測のツールとして利用するのは難しい。『イノベーションの最終解』(本書)で紹介する分析ツールは、『イノベーションのジレンマ』と『イノベーションへの解』の理論がもとになっている。本書は理論を活用して、将来への洞察を得るための本である。
本書では「理論」を用いて業界の変化を予測する方法として、以下の3つのプロセスを説明する。
図0-3. 業界の変化を予測するためのプロセス