イノベーションのジレンマ 第5章ポイント
破壊的イノベーションに直面した優良企業の失敗原因
- 顧客の意見に注意深く耳を傾け、競争相手の行動に注意し、収益性を高める高性能、高品質の製品の設計と開発に資源を投入するがゆえに、破壊的イノベーションに直面して失敗する
- 現在の事業モデルの核となる能力を生みだすプロセスと価値基準が、実は破壊的技術に直面したときに、無能力の決定的要因になる
優良企業の経営者が意識すべき組織の五原則
- 優良企業の資源配分のパターンは、実質的に顧客が支配している(資源依存理論)
- 小規模な市場は、大企業の成長需要を満たさない
- 破壊的技術の最終的な用途は事前にはわからない
- 組織の能力は、組織内で働く「人材の能力」とは関係がなく、むしろその「プロセス」と「価値基準」にある
- 技術の供給が市場の需要と一致しない確立された市場において評価されない「破壊的技術の特徴」が、新しい市場で大きな価値を生むことがある
資源依存理論
- 企業は経営資源に依存し、その資源を提供する相手は「顧客」である
- 企業の行動を決定するのは「経営者」ではなく「顧客」である
- 優良企業では「経営幹部の決定」よりも「顧客重視の資源配分と意思決定プロセス」の方が、投資の方向性を決める上で重要である
破壊的技術が出現したときの経営者の選択
- とにかく破壊的技術を追求し、収入源である顧客が拒否しようと、上位市場の技術より収益性が低かろうと、その技術は長期戦略にとって重要であると全社員に伝える
- 独立した組織を作り、その技術を必要とする新しい顧客に対して活動する(前項よりも成功確率が高い)
イノベーションの実現を左右する資源配分プロセス
- 重要な資源配分の決定は、プロジェクトが承認された後、現場のマネージャーによってなされることが多い
- 企業の利益追求とマネージャーの出世欲が、顧客ニーズに合った資源配分プロセスを決定する
- イノベーションの実現は、現場マネージャーが采配する資源配分プロセスに依存している
破壊的イノベーションに対抗するために独立した組織を作る理由
- 1つの企業の中で、2つのコスト構造、2つの収益モデルを平穏に共存させることは極めて難しい
- 単一の組織の中で、主流事業の競争力を維持したまま、同時に破壊的技術も迫求しようとするのは不可能である
- 全く別のバリュー・ネットワークの中に独立した組織を作り、適切な顧客に依存することで、資源依存の力(優良顧客の求める製品・サービスに資源配分が集中してしまうこと)を調和すれば、破壊的技術によって市場で強力な地位を築くことができる
- ただし独立組織のスピンアウトによって破壊的技術を追及すると、結局、もう一方の事業部門をつぶす可能性が出てくる
破壊的イノベーションを実現する組織の在り方
- 破壊的技術に適した価値基準やコスト構造を持つ組織を作り出す
- 破壊的技術を開発するプロジェクトは、小さな機会や小さな勝利にも前向きになれる小さな組織に任せる
- 破壊的技術に取り組むために(主流組織の資源の一部は利用するが)主流組織のプロセスや価値基準は利用しない
- 破壊的技術を商品化する際は、破壊的製品の特徴が評価される新しい市場を見つけ出す
- 破壊的技術の市場を探るときは、早い段階にわずかな犠牲で失敗にとどめられるよう計画を立て、試行錯誤の繰り返しの中で市場を形成していく