イノベーションのジレンマ 第7章-3:新しい成長市場を見いだす

事例:ホンダ

ホンダは、経験曲線に基づく慎重な製造戦略を採用し、価格を引き下げ、販売台数を増やし、積極的にコストを削減し、さらに価格を引き下げ、さらにコストを削減し、オートバイ市場において難攻不落の低コスト大量生産メーカーの地位を築いた。ホンダはその基盤を利用して上位市場に移行し、ハーレー・ダビッドソンとBMWを除くすべての実績あるオートバイ・メーカーを市場から追い落とした。

ホンダの50CCバイクは、北米市場では破壊的技術であった。ハーレー・ダビッドソン、BMWなど、従来のオートバイ・メーカーとは全く別のバリュー・ネットワークを構築し、上位市場に向けてエンジンの馬力を高めた製品を発売した。

ハーレーはホンダに対抗すべく、小型エンジン付きバイク製品を生産し、自社の北米ディーラー網でバイクを販売しようとしたが、収益性の低さを懸念したディーラーの反対に遭い、シェアを確立するのに失敗した。ハーレーとそのディーラーは、同じバリュー・ネットワークで共存しているため、ハーレーかディーラーのどちらかが既存のバリュー・ネットワークの下位に移動して、ローエンド市場で戦うことは難しかった。

ホンダは北米のオートバイの潜在市場がどのような市場かを正確に予測できなかったばかりでなく、潜在市場の規模も正確に予測できていなかった。ホンダの成功は予測できなかった用途から生まれていた。

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