イノベーションへの解 第5章 概要
状況に基づく理論
将来コア・コンピタンスを習得し、社内に留めておくことが必要になる付加価値活動を事前に知るためには、「状況に基づく理論」を習得する必要がある。
性能が十分な状況

イノベーション領域において優位に立つために「片づけるべき用事」をべースに検討する。
性能が十分な状況では、外部委託による専門化や特化が有利である。
アーキテクチャ(基本設計概念)
製品の構成要素とサブシステムを決定し、目標機能を実現するためにそれらがどのように相互作用する必要があるかを定義する。
製品アーキテクチャを競争状況に適合させる企業が、成功する可能性が最も高い。
相互依存型アーキテクチャ
一方の設計・製造方法が、もう一方の設計・製造方法に依存する状態。
それぞれの構成要素を最適な方法で設計・開発するため、機能面と信頼面での性能を最適化する。
モジュール型アーキテクチャ
あらゆる構成要素の絡み合いや機能が完壁に指定されている。
誰が部品やサブシステムをつくるかを問わない代わりに、厳しい規格によってエンジニアに設計の自由を与えない。
性能が十分ではない状況
企業はできる限り優れた製品をつくることで競争しなければならない。
競争では、独自仕様の相互依存型アーキテクチャを基に性能を最適化する企業に競争優位が約束される。
相互依存型の独自アーキテクチャ
相互依存型の独自アーキテクチャで競争する企業は、統合型企業でなければならない。
システムのどの構成部品を製造するにも、システム内の重要な部品の設計と製造をコントロールする必要がある。
性能が十分でない状況
未熟な新技術が持続的向上のために採り入れられることが多い。
新規参入企業がブレークスルー技術(画期的技術)の商品化に成功しないのは、システムの他の構成要素にも変更を強いる相互依存関係が多すぎるからだ。
ブレークスルー技術
技術進歩の軌跡に持続的な影響を及ぼすもの
ほとんどが持続的な特性を持っており、製品内の他のサブシステムとの間には予測不能な相互依存関係がある。
破壊的技術
技術面での飛限的前進を伴わず、既存技術を破壊的ビジネスモデルという形にまとめたもの
持続的イノベーション
年々行われる単純な漸進的技術
一足跳びに持続的軌跡を上っていくブレークスルー技術
性能が十分である状況
製品の機能性と信頼性があまりにも良くなり過ぎた「オーバーシューティング」という状態。
顧客は改良製品を喜んで受け入れるものの、割増価格を払ってまで購入する意志はない。
オーバーシューティングでは、機能性と信頼性に関するニーズを満たされてしまうと、顧客は「次に何が十分でないか」を定義し直すようになる。
これが起こるとき、ある市場階層における競争の基盤が変わる。
「性能が十分ではない状況」では有利だった相互依存型の独自アーキテクチャが、「性能が十分である状況」ではモジュール型設計へと進化する。
モジュール型アーキテクチャ
個々のサブシステムの性能を高める上で全体を設計し直す必要がなく、新製品を早く市場に出すことができるため、「性能が十分である状況」において有利である。
標準インターフェースはシステム性能に妥協を強いるが、「性能が十分である状況」では多少の機能性をあきらめる余裕がある。
モジュール型のインターフェースは、最終的には融合して業界標準となる。
各分野で選り抜きのサプライヤーから調達した部品を組み合わせて、顧客の特定のニーズに巧みに応えられるようになる。
そのような特化型企業が、統合型リーダーを破壊する。
特化型企業は、それぞれの顧客が必要とする通りのものを迅速に提供することで競い合う。
特化型の構造を持つために間接費が低く、割安価格でも利益をあげながら、ローエンドの顧客を摘み取ることができる。
統合化とモジュール化
統合化からモジュール化への前進は、製品の改良が進んで顧客の要求を追い抜く度に繰り返される。
そして「性能が十分ではない状況」に業界を支配していた独自システムや垂直統合企業は、「性能が十分である状況」では特化型企業に取って代わられていく。
性能向上の軌跡が各市場の各階層を通過するにつれて支配を弱め、それと同時にモジュール型のモデルが次第に支配的になっていく。
アーキテクチャ戦略や統合戦略の有効性は「性能ギャップ」や「性能過剰」の状況に依存する。
顧客ニーズと競争基盤の変化

一般に技術改良の軌跡は、どの市場階層においても顧客の利用能力が向上するぺースを上回るため、「相互依存型アーキテクチャ&統合型企業」から「モジュール型アーキテクチャ&特化型企業」へと向かう。
ときには顧客が要求する機能性に非連続的な変化が生じ、顧客ニーズの変化を上方に押し上げることがある。
この現象が発生すると、統合が競争優位の源である状況に逆戻りする。
競争において、統合が優位となる地点と非統合が優位となる地点は、時とともに移動する。
バリューチェーンの各段階をつなぐインターフェースをまたいで統合している企業は繁栄する。
モジュール型インターフェースの成立条件
指定可能性:
構成要素のどの属性が製品システムの動作にとって重要で、どれがそうでないかを識別
検証可能性:
調達部品の属性を評価
予測可能性:
システム全体の中でサブシステムがどのように相互作用するかを認識
モジュール化と組織
指定可能性、検証可能性、予測可能性が揃ったとき、複数の組織が距離を置きながら連携できるようになる。
モジュール型インターフェースが確立すると、そのインターフェースに沿って産業の非統合化が起こる。
モジュール化の条件が満たされない場合は、組織統合が重要となる。
アーキテクチャのポイント
「純粋な相互依存型アーキテクチャ」と「純粋なモジュール型アーキテクチャ」は連続体の両極をなしている。
競争基盤が機能性と信頼性にある状況でモジュール型アーキテクチャによって事業を立ち上げると、モジュール式が支配的なアーキテクチャになるまで競争上大きな不利を被る。
製品の機能性と信頼性が顧客のニーズを十分満たしていない状況で圧倒的に優位に立つ企業は、独自の製品アーキテクチャを持ち、バリューチェーンの中で性能を制約するインターフェースをまたいで統合されている。
機能性と信頼性が「十分以上」になり、代わってスピードとレスポンスが「不十分」な状況では、相互作用の方式がモジュール型アーキテクチャと業界標準によって定義されている特化型の専門企業が優位に立つ。
新市場型破壊の波が始まって間もない頃は、まだ製品が十分でないため、独自アーキテクチャを持つ統合型企業が最も成功する。
その後、破壊者たちが性能向上を遂げても、やがては間接費が低い特化型企業によるローエンド破壊によって攻撃される。
複数の市場階層に顧客を持つ企業は、こうした競争市場の変化を乗り切るのは難しい。