イノベーションへの解 第5章-5:事業範囲を適切に定める
モジュール型アーキテクチャは、個々のサブシステムの性能を高める上で全体を設計し直す必要がなく、新製品を早く市場に出すことができるため、「性能が十分である状況(赤領域)」において有利である。標準インターフェースはシステム性能に妥協を強いるが、「性能が十分である状況(赤領域)」では多少の機能性をあきらめる余裕がある。
モジュール型は独立した特化型の組織にも、部品やサブシステムの販売、購入、組立を可能とすることから、産業構造にも大きな影響を及ぼす。相互依存的型では、システムの主要要素のどれか一つを製造するために全ての要素を製造する必要があったのに対し、モジュール型では外部委託が可能になり、また一種類の構成要素を供給して利益を得ることもできる。
モジュール型のインターフェースは、最終的には融合して業界標準となる。これが起こると、企業はそれぞれの分野で選り抜きのサプライヤーから調達した部品をうまく組み合わせて、顧客の特定のニーズに巧みに応えられるようになる。そのような特化型企業が、統合型リーダーを破壊する。特化型企業は、それぞれの顧客が必要とする通りのものを迅速に提供することで競い合う。特化型の構造を持つために間接費が低く、割安価格でも利益をあげながら、ローエンドの顧客を摘み取ることができる。
統合化からモジュール化への前進は、製品の改良が進んで顧客の要求を追い抜く度に繰り返される。そして「性能が十分ではない状況」に業界を支配していた独自システムや垂直統合企業は、「性能が十分である状況」では特化型企業に取って代わられていく。