イノベーションのジレンマ 第5章-7:破壊的技術はそれを求める顧客を持つ組織に任せる
独立組織のスピンアウトによって破壊的技術を追及すると、結局、もう一方の事業部門をつぶす可能性が出てくる。ヒューレット・パッカード(HP)のパソコン用プリンター事業には、その可能性が当てはまるかもしれない。
HPは、パソコン印刷用のプリンターに「レーザージェット印刷」と「インクジェット印刷」の両方を採用した。レーザージェット印刷よりも低品質・低価格で、破壊的技術である「インクジェット印刷」に対して完全に独立した組織部門を新設し、レーザージェットとインクジェットの2つの事業を互いに競争させた。
レーザージェットは性能向上とともに上位市場へ移行した。他方、インクジェットは性能向上とともに、パソコン市場のユーザーに十分な品質を提供するに至った。インクジェット技術がさらに向上し、上位市場へ移行していくと、いずれはレーザージェット事業をつぶすかもしれない。