イノベーションのジレンマ 第6章-2:組織の規模を市場の規模に合わせる
「イノベーションをマネジメントする上で重要な戦略は、先頭に立つか、それとも追随者で行くかを決定することである」とクリステンセン教授はいう。
ディスク・ドライブ業界を調べると、イノベーションでリードするか、後れをとるかは、競争上の地位には対して影響を及ぼさないことがわかった。競争で先駆者が追随者よりはるかに有利だったことを示す事実は見られない。先陣を切ったことで学習効果のようなものが得られ、初期のリードを活かして他社よりも成果をあげた様子もない。
率先して持続的技術を採用した企業が、出遅れた企業より競争上、優位に立ったという事実は見られないが、破壊的技術のリーダーシップは極めて重要であることは明らかになった。
- 確立された市場に参入し、1億ドルの売上水準を達成した企業は6%(3/51社)であった。
- 破壊的イノベーションをリードした企業(誕生から2年以内の市場に参入した企業)で、1億ドルの売上高を超えた企業は37%(12/32社)に達していた。
- 破壊的技術が現れてから2年以内に、新しいバリュー・ネットワークに参入した企業は、それ以降に参入した企業に比較して、成功率が6倍であった。
- 小規模な新しい市場への参入によって成長を求める企業は、大規模な市場で成長を求める企業の20倍の売上を計上していた。
ディスク・ドライブ業界では、破壊的技術をリードした企業は、“熾烈な競争にある既存市場へ参入する” という「競争リスク」を避ける代わりに、“破壊的技術の新しい市場が発展せずに終わるかもしれない” という「市場リスク」を引き受けた。その結果、後発参入の企業よりも何倍もの売上を計上した。
ディスク・ドライブ業界では、次のようなことも明らかとなったため、以下に補足する。
- 重要なのはどのような組織形態で取り組んだのではなく、破壊的製品の発売とその販売対象となる市場の開拓をリードしたかどうかである。
- 「画期的だが、実質的には持続的な性質を持つ技術を商品化するために設立された新企業」は「実証された技術を使い、簡単で便利な信頼性の高い製品を持ち込み、確立された業界を覆そうとする新企業」よりも成功の確率がはるかに低い。
- 業界で実績のある企業は、画期的な持続的技術を使って上昇することに対する志向は強いが、破壊的技術を採用することに対しては抑制する志向が強い。