イノベーションのジレンマ 第8章-7:組織にできること、できないことを評価する方法

企業のプロセスや価値基準が形成される段階では、企業の創業者の行動や姿勢が大きな影響力を持つ。創業者のやり方が有効であれば、従業員は創業者の問題解決方法や意思決定基準の正しさを経験する。そのやり方をうまく利用し、連携して反復作業に対処していくうちに、プロセスが確立していく。同様に、創業者の決めた優先順位に従って資源配分を決定し、商業的に成功すれば、企業の価値基準が形成される。

企業が成熟すると、従業員は徐々にそれまで受け入れてきた優先順位や意思決定の方法が正しい仕事のやり方だと考えるようになる。組織メンバーの思い込みによって仕事の方法や意思決定の基準を受け入れるようになると、そのようなプロセスや価値基準が、組織の「文化」を形成するようになる。組織文化があれば、従業員は自主的に一貫した行動をとるようになる。

組織の能力を定義する中心的要因は、時間とともに、資源から認知しやすい意識的なプロセスや価値基準へ、さらに組織文化へと移行していく。組織の能力が人材(資源)からプロセスや価値基準へ移行し、さらにそれが文化のなかに組み込まれると、変化は極めて難しくなる。

プロセスや価値基準には資源ほどの柔軟性はない。組織が利益率の高い商品を優先するときの価値基準において、利益率の低い商品が優先されることはない。

経営者は、組織の能力が新しい仕事に適していないと判断した場合、次の3つの選択肢に向き合うことになる。

  • ① 買収による能力の獲得
    新しい仕事に適したプロセスと価値基準を持った別の組織を買収する。
  • ② 新しい能力を内部で生み出す
    現在の組織のプロセスと価値基準を変えようと試みる。
  • ③ スピンアウト組織によって能力を生み出す
    独立した別組織を新設し、その中で新しい問題を解決するために必要な新しいプロセスと価値基準を育てる。

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