イノベーションのジレンマ 第9章-3:供給される性能、市場の需要、製品のライフサイクル

性能の供給過剰は「製品のサイクルを次の段階への移行を促す重要な要因」であり、「購買階層のある段階から別の段階への移行を促す要因」でもある。そのことを示す2つのマーケティング・モデルを紹介する。

1. ウィンダミア・アソシエーツの「購買階層」

1. 機能、2. 信頼性、3. 利便性、4. 価格の4段階で構成される製品サイクル

  1. 機能
    機能に対する市場の需要を満たす製品がない状況では、競争の基盤、つまり製品の選択基準は製品の『機能』になりやすい。
  2. 信頼性
    機能に対する市場需要を十分に満たす製品が複数現れると、「顧客信頼性に対する市場の需要」が「メーカーが供給できる信頼性」を上回る間は、顧客は『信頼性』を基準に製品を選択し、最も信頼性の高い製品のメーカーがプレミアムを稼ぐ。
  3. 利便性
    複数のメーカーが「市場が求める信頼性」を満たすまで改良を進めると、競争の基盤は『利便性』へと移り、顧客は最も使いやすい製品と最も取引しやすいメーカーを選択するようになる。「市場の需要」が「メーカーが供給できる利便性」を上回っている間は、顧客は利便性を基準に製品を選択し、メーカーはそれに対して価格プレミアムを受ける。
  4. 価格
    最後に複数のメーカーが、市場の需要を十分に満たす便利な製品やサービスを提供するようになると、競争の基盤は『価格』へと移る。

2. ジェフリー・ムーアの「クロッシング・ザ・カズム(キャズム理論)」

1. イノベーター、2. アーリーアダプター、3. アーリーマジョリティー、4. レイトマジョリティー、5. ラガードの5つの客層で構成されるテクノロジー導入ライフサイクル

  1. イノベーター
    製品はまず、製品を機能だけで選択する顧客である『イノベーター』によって使われる。この段階では、最も高性能な製品が大きな価格プレミアムを得る。
  2. アーリーアダプター
    次に『アーリーアダプター』という顧客が製品を購入するようになり、主流市場の機能に対する需要が満たされると、市場は大幅に拡大する。

  3. アーリーマジョリティー
    市場の拡大に伴い、メーカーは『アーリーマジョリティー』という顧客の間に生じる信頼性に対する需要に対応しようとする。
  4. レイトマジョリティー
    製品とメーカーの信頼性の問題が解決されると、第三の成長の波がおとずれ、イノベーションと競争の基盤は利便性へと移り『レイトマジョリティー』という顧客を引き込む。

  5. ラガード
    ある次元の性能に対する市場の需要が飽和状態に達するまで、技術は進化することができる。イノベーションが一般化すると『ラガード』という顧客がようやく製品を採用する。

『機能』『信頼性』『利便性』『価格』という競争基盤の進化のパターンは、多くの市場に見られる。そして、破壊的技術の登場は競争基盤の変化の兆しである。

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