イノベーションへの解 第5章-9:事業範囲を適切に定める

新市場型破壊の波が始まって間もない頃は、まだ製品が十分でないため、独自アーキテクチャを持つ統合型企業が最も成功する。その後、破壊者たちが数年かけて性能向上を遂げても、やがては間接費が低い特化型企業によるローエンド破壊によって攻撃される。

複数の市場階層に顧客を持つ企業は、こうした競争市場の変化を乗り切るのは難しい。市場の上位層と低位層を獲得する際には、まったく異なる戦略とビジネスモデルが求められるからである。この2つの顧客層を同時に、かつ適切な方法で追求するためには、複数の事業部門が必要になることが多い。

「純粋な相互依存型アーキテクチャ」と「純粋なモジュール型アーキテクチャ」は連続体の両極をなしており、企業はこの両極間の任意の戦略を任意の時点で選択する。

競争基盤が機能性と信頼性にある状況でモジュール型アーキテクチャによって事業を立ち上げると、モジュール式が支配的なアーキテクチャになるまで競争上大きな不利を被るが、必ずしも失敗するわけではない。

リーダー企業が独自アーキテクチャからくる信頼性、機能性での優位を基に競合企業を引き離したときは、アーキテクチャをモジュール化して公開し、低コストの組立能力によって市場拡大に寄与できる企業向けに、サブシステムをモジュールとして積極的に販売し始める必要がある。

破壊的イノベーションにおいても、独自アーキテクチャから事業を始め、競争基盤が変化したときにアーキテクチャを公開して、低コストの組立業者向けに主要なサブシステムを供給することは可能である。このような戦略をとる企業は、ニッチ・プレーヤーになったり、差別化できないコモディティの供給業者になったりすることを回避できる。

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