イノベーションへの解 第5章ポイント

「状況に基づく理論」の習得

  • コア・コンピタンス理論には、現在コア・コンピタンス(中核的な能力)でないと思われる業務が、将来は非常に重要な能力になるという問題がある
  • 将来のコア・コアコンピタンスを見極めるためには、「今日何を習得し、将来何を習得する必要があるか」について「片づけるべき用事」をべースに検討する必要がある

アーキテクチャ(基本設計概念)

  1. 相互依存型アーキテクチャ
    • 一方の設計・製造方法が、もう一方の設計・製造方法に依存する状態
    • それぞれの構成要素を最適な方法で設計・開発するため、機能面と信頼面での性能を最適化する
    • システム内の重要な部品の設計と製造をコントロールするために、相互依存型の独自アーキテクチャで競争する企業は、統合型企業でなければならない
  2. モジュール型アーキテクチャ
    • あらゆる構成要素の絡み合いや機能が完壁に指定された状態
    • モジュール型インターフェースでは、バリューチェーンの全構成要素または全段階にわたって、予測不能能な相互依存性が全く存在しない

顧客の問題にとって何が解決策となるか

図5-1. 製品アーキテクチャと統合 図5-1. 製品アーキテクチャと統合

  • 性能が十分ではない状況(青領域)
    • 企業はできる限り優れた製品をつくることで競争しなければならない
    • 独自仕様の相互依存型アーキテクチャを基に性能を最適化すれば、競争優位が約束される
    • 未熟な新技術が持続的向上のために採り入れられることが多い
  • 性能が十分な状況(赤領域)
    • 外部委託による専門化や特化が有利である

ブレークスルー技術

  • ブレークスルー技術
    • 技術進歩の軌跡に持続的な影響を及ぼすもの
    • ブレークスルー技術のほとんどが持続的な特性を持つ
    • 製品内の他のサブシステムとの間には予測不能な相互依存関係がある
    • 新規参入企業がブレークスルー技術(画期的技術)の商品化に成功することがほとんどないのは、システムの他の構成要素にも変更を強いる相互依存関係が多すぎて、まったく新しい技術を組み込んだ有望な製品の商品化になかなかこぎ着けないからである
  • 破壊的技術(破壊的イノベーション)
    • 技術面での飛限的前進を伴わず、既存技術を破壊的ビジネスモデルという形にまとめたもの
  • 持続的技術(持続的イノベーション)
    • 漸進的技術(年々行われる単純な改良)とブレークスルー技術(劇的で画期的なもの)がある
    • どちらも持続的な影響を及ぼすため、優良企業がほぼ必ず勝利を収める

「性能ギャップ」や「性能過剰」の状況に依存するアーキテクチャ戦略や統合戦略

  • 統合化からモジュール化への前進は、製品の改良が進んで顧客の要求を追い抜く度に繰り返される
  • 性能向上の軌跡が各市場の各階層を通過するにつれて支配を弱め、それと同時にモジュール型のモデルが次第に支配的になっていく
  • 「性能が十分ではない状況」に業界を支配していた独自システムや垂直統合企業は、「性能が十分である状況」では特化型企業に取って代わられていく

顧客ニーズと競争基盤の変化

  • 一般に技術改良の軌跡は、どの市場階層においても顧客の利用能力が向上するぺースを上回るため、「相互依存型アーキテクチャ&統合型企業」から「モジュール型アーキテクチャ&特化型企業」へと向かう
  • 顧客が要求する機能性に非連続的な変化が生じ、顧客ニーズの変化を上方に押し上げると、統合が競争優位をもたらす状況に逆戻りする。
  • 競争において、統合が優位となる地点と非統合が優位となる地点は、時とともに移動するため、バリューチェーンの各段階をつなぐインターフェースをまたいで統合している企業は繁栄する

効果的なモジュール型インターフェースの条件

  • 企業が外部調達するか、顧客に販売するための必要条件
    1. 指定可能性:供給業者と顧客の両者が「構成要素のどの属性が製品システムの動作にとって重要で、どれがそうでないか」を識別できなければならない
    2. 検証可能性:調達部品が条件を満たしているかどうかを検証するために、それらの属性を評価できなければならない。
    3. 予測可能性:サブシステムによって狙い通りの成果をあげるために、顧客はシステム全体の中でサブシステムがどのように相互作用するかを理解していなければならない
  • 指定可能性、検証可能性、予測可能性が揃ったとき、複数の組織が距離を置きながら連携できるようになる。モジュール型インターフェースが確立すると、そのインターフェースに沿って産業の非統合化が起こる
  • 指定可能性、検証可能性、予測可能性が存在しない場合は、経営者による監督と調整が、調整メカニズムとして優れた機能を果たす
  • モジュール化の条件が満たされない場合は、組織統合が重要となる

アーキテクチャ戦略の優位性

  • 相互依存型アーキテクチャとモジュール型アーキテクチャは連続体であり、企業はその中から任意の戦略を任意の時点で選択する
  • 製品の機能性と信頼性が顧客のニーズを十分満たしていない状況では、独自の製品アーキテクチャを持ち、バリューチェーンの中で性能を制約するインターフェースをまたいで統合された企業が優位に立つ
  • 機能性と信頼性が「十分以上」になり、代わってスピードとレスポンスが「不十分」な状況では、モジュール型のアーキテクチャと業界標準によって定義された特化型の専門企業が優位に立つ
  • 新市場型破壊の波が始まって間もない頃は、まだ製品が十分でないため、独自アーキテクチャを持つ統合型企業が最も成功するが、その後、破壊者たちが数年かけて性能向上を遂げても、やがては間接費が低い特化型企業によるローエンド破壊によって攻撃される

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