イノベーションのジレンマ 第6章-5:組織の規模を市場の規模に合わせる
① 新しい市場の成長率を押し上げる
失敗例として、アップル・コンピュータがPDAの市場に早期参入した事例を紹介する。
1990年代初頭にPDA市場が現れたアップルは「ニュートン」という製品の開発に莫大の投資を行ったが、発売後2年で失敗が確定した。その理由は性能面、価格面において顧客が求めるものとズレていたからである。
破壊的製品が最初に出現したときは、メーカーも顧客もどのように使うのかがわからず、製品のどのような特徴に価値があり、どのような特徴に価値がないのか判断できない。しかしアップルはニュートンを発売するにあたって、顧客は自分のニーズを理解しており、それを満たすために積極的に金を出すであろうと高をくくっていた。
アップルはPDA市場の開拓を急ぐあまり、ニュートンに大規模な投資を行ったが、十分な収益が得られず失敗に終わった。アップルの失敗から言えるのは「小規模な市場では、優良企業の短期的な成長需要を満たすことはできない」ということだ。