イノベーションのジレンマ 第6章-6:組織の規模を市場の規模に合わせる
② 市場がうまみのある規模に拡大するまで待つ
次に紹介するディスク・ドライブ業界の事例は、市場参入を遅らせたことによる失敗例である。
- プライム・コーポレーションは、1978年にミニコン市場に参入し、8インチ・ドライブの販売でリーダーの座に上りつめ、「2年の製品発売サイクル」を確立した。プライム社は、1982年にデスクトップ市場向けの5.25インチ・ドライブを遅れて販売したが、同市場に先行参入していたシーゲート・テクノロジーなどがその経験をもとに「1年の製品発売サイクル」を確立したため、ドライブの性能が追いつかれて、結果として1990年に倒産した。
- シーゲート・テクノロジーズは、業界二番手で3.5インチ・ドライブを開発したが、3.5インチ市場が十分にうまみのある規模になるまで製品を発売しなかった。その間に、コナー・ペリフェラルズが、ポータブル・コンピュータ市場に適した開発・販売手法を確立した。結果として、シーゲートは3.5インチ・ドライブの販売において、ポータブル・コンピュータ市場で出遅れ、デスクトップ市場でしか売ることができなかった。そして、シーゲートのデスクトップ向け3.5インチ・ドライブは、同社のデスクトップ向け5.25インチ・ドライブの売上を浸食することになった(カニバリゼーションが起こった)
新しい市場を開拓する企業は、後発参入の企業では真似のできない、市場の需要に適した能力を身につけることが多い。市場がうまみのある規模に拡大してから市場に参入すると、裏目に出ることがある。