イノベーションへの解 第9章-9:良い資金もあれば、悪い資金もある

企業の「資源 – プロセス – 価値基準」は、中核事業に合わせて調整されると株価は急騰する。すると、中核事業の潜在成長率が株価に完全に織り込まれ、新しい経営幹部は、成長のために投資を行う必要を認識する。

この段階で、企業はさらに大きな成長ギャップに直面しており、「非常に速く非常に大きくなる新成長事業を必要とする状況」に逆戻りする。そして企業はこのプレッシャーから誤った決定を何度も下し、莫大な企業価値を破壊した末に、他社に買収されてしまう。

“企業資金が良い資金なのは、堅調に成長を続けている間だけ” という事象を「成長投資のジレンマ」という。上層部は既存事業で実行される持続的イノベーションが、投資家の予想を上回る実績をあげると信じているため、新規事業において無消費と対抗する間は、創発的戦略プロセスを進める猶予を与える。

成長投資が困難になるのは、成長が減速するとき、つまり持続的イノベーションだけでは投資家の期待を満たすには不十分であることを経営幹部が悟るときである。企業がイノベーターに新事業の急成長を求め、成長に必要なことを行う余裕を失うと、企業資金の性質が変わる。

経営幹部が中核事業の成長鈍化を放置すれば、新成長事業は「企業全体の売上と利益の伸び率を高める」という大きな責任を負わされ、非常に速く非常に大きくなることを要求される。その結果、企業資金は成長事業にとって毒薬となってしまう。

投下資本を無駄にしない唯一の方法は、それが良い資金であるうちに使う、つまり本業がまだ十分健全で、成長を気長に待てるような状況で投資することである。

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