イノベーションへの解 第8章-2:戦略策定プロセスのマネジメント
図8-1は「意図的戦略策定プロセス」と「創発的戦略策定プロセス」の両方が、あらゆる企業で常に作用していることを示している。
図8-1. 戦略が定義され実行されるプロセス
意図的戦略策定プロセスから生まれる「意図的戦略」
意図的戦略(意図的戦略策定プロセスを通して生まれた戦略)とは、意識的で分析的なもので、市場成長率、市場分野の規模、顧客のニーズ、競合企業の強みと弱み、技術曲線などに関するデータ分析をもとにしていることが多い。一般的にこのプロセスでは、始めと終わりがはっきり決まっているプロジェクトが策定され、「トップダウン」で実行に移される。
意図的戦略を用いて社内の活動を適切に組織化できるのは、次の条件が揃っているときに限られる。
- 戦略は、成功のために必要なすべての重要な詳細を網羅し、それに対処していかなければならない。
- 戦略の実行責任者は、経営幹部の意図的戦略の重要な部分をすべて理解していなければならない。
- 組織が集団行動を取るためには、戦略が経営トップだけでなく、全従業員にとって理にかなったものでなければならない。そうでなければ、全員が首尾一貫した適切な行動を取ることができない。
- 集団の意図は、外部からの政治的・技術的な力や市場動向などの予期しない影響を、極力排除しつつ果たされなければならない。
現実には、これらの条件がすべて当てはまる状況はほとんどないため、企業が実際に実行する戦略は、創発的戦略策定プロセスを通して修正されていく。