イノベーションへの解 第6章ポイント

コモディティ化と脱コモディティ化

  • 「コモディティ化」がバリューチェーンのどこかで作用しているときは必ず、「脱コモディティ化」という補完的なプロセスがバリューチェーンの別の場所で作用している
  • 「コモディティ化」は差別化を阻むことで企業の収益力を破壊するのに対して、「脱コモディティ化」は潜在的な富を創出し、それを獲得するチャンスを生み出す

バリューチェーン

  • 差別化能力はバリューチェーンの中を絶えず移動する
  • バリューチェーンの中の「性能がまだ十分でない地点」に位置を定める企業が利益を手にする
  • バリューチェーンの構成要素のそれぞれに、通過しなければならない一連のプロセスがある

「十分でない」状況で統合型企業が利益を得られる理由

  1. 製品の相互依存型の独自アーキテクチャにより、差別化が容易である
  2. 相互依存型のアーキテクチャを持つ製品の設計と製造では、元来変動費に対する固定費の割合が高く、大きなスケールメリットが働く

独自アーキテクチャの限界

  • 企業が独自アーキテクチャ製品を競合企業よりも高いコスト競争力で製造できるのは、「十分でない」状況のときである
  • 収益性の高い支配的企業が主流顧客の利用能力を追い抜いてしまえば、モジュール式が支配的となり、コモディティ化が始まる
  • モジュール化が進んだ状況で利益を上げるためには、バリューチェーンのどこか他の場所を探さなければならない

コモディティ化のプロセス

  1. 新しい市場が生まれると、ある企業が、十分ではないが競合製品に比べれば願容のニーズに近い、独自製品を開発する。企業は独自アーキテクチャを通じて製品を生み出すため、魅力的な利益を得る
  2. 企業は直接の競争相手より優位に立とうと奮闘するうちに、やがて市場の低位層の顧客が利用できる機能性と信頼性を追い抜いてしまう
  3. この階層の競争基盤の変化が促される
  4. モジュール型アーキテクチャへの進化が促される
  5. 産業の非統合化が進む
  6. 誰もが同じ部品を入手でき、同じ基準に基づいてそれを組み立てるようになるため、製品の性能やコスト面で競合企業との差別化を図ることが極めて困難になる
  7. 機能面でのオーバーシューティングが市場の底辺から始まり、上方に移って高位層を襲う

オーバーシューティング(十分以上に良い状況)

  • オーバーシューティングに陥る企業は、破壊によってシェアを奪われるか、コモディティ化を通じて利益を奪い取られてしまう
  • コモディティ化のプロセスが、脱コモディティ化という補完的なプロセスを引き起こすことから、オーバーシューティングでは、将来の魅力ある利益がバリューチェーンの別の段階や階層で生み出されることが多い

脱コモディティ化(補完的プロセス)

  • 脱コモディティ化は、バリューチェーンの中の従来魅力ある利益を得ることが難しかった場所(かつて差別化が不可能だったモジュール型のプロセスや部品、サブシステムなど)に生じる
  • モジュール型製品の組立業者による低コスト戦略が有効なのは、高コストの競合企業と競争する限りにおいてである
  • モジュール型製品の組立業者が魅力ある利益を持ち続けるためには、コス卜の高い独自開発製品の供給業者をある市場階層から駆逐するや否や、できるだけ早く上位市場に移行して、再び高コスト企業と対決しなければならない
  • 性能決定サブシステムは、モジュール型製品の組立業者がどれだけ速く上位市場へ移行できるかを制約または決定するメカニズムである
  • 「競合よりも自社のサブシステムの方が最終製品の性能を高められる」と顧客に認識させるために、サブシステムの供給業者はより相互依存的で独自仕様の設計を開発せざるを得ない
  • 同業者間の競争を通して、性能決定サブシステムの大手供給企業は、差別化された独自製品を魅力ある利益率で販売できるようになる
  • 収益性の高い独自製品の創出は、次のコモディティ化と脱コモディティ化の周期の始まりである

魅力的利益保存の法則

  • 産業の収益性を魅力的にするのは、その産業の企業がある特定の時点で、バリューチェーンのそれぞれの地点で置かれている状況である
  • 差別可能な製品、規模に基づくコスト競争力、そして高い参入障壁を生み出すのは「バリューチェーンの中の性能がまだ十分でない地点に位置する企業が利益を得る」という状態である

コモディティ化・脱コモディティ化に統合企業が強い理由

  • コモディティ化と脱コモディティ化のプロセスが常に作用しており、その結果、利益を生み出す場所がバリューチェーンの中で刻一刻と移動する
  • 統合企業は柔軟に連結、分離することができるため、特化型企業に比べて長期間利益をあげながら成長する可能性が高い
  • バリューチェーンを下から上まで統合していくことは、最適化されたアーキテクチャを持つサブシステムを設計する機会を生み出し、そのサブシステムは、顧客が組み立てるモジュール型製品の性能を高める主要な手段となる

ブランドのコモディティ化・脱コモディティ化

  • ブランドに最も価値があるのは、価値連鎖の「まだ十分でない」段階である
  • 機能が十分ではない状態は、製品内の性能決定サブシステムにあり、速度、単純性、利便性が十分でない状態は、小売業者とのインターフェースにあることが多い
  • 製品の機能性と信頼性が十分以上になると、次に購入や利用の手続さと利便性が十分でなくなり、ブランドはこれらを満足させるビジネスモデルを作ったチャネルへと移動し始める

魅力的利益保存の法則

  • バリューチェーンにおいては「モジュール型アーキテクチャ」と「相互依存型アーキテクチャ」、そして「コモディティ化」と「脱コモディティ化」という相互に補完的プロセスが、十分でない製品の性能を最適化するために、常に並行して存在する
  • コモディティ化と脱コモディティ化のプロセスは、どちらもコアではなく周辺部で始まる
  • 魅力的な利益を獲得する能力は、バリューチェーンの中を動いて、直接顧客が入手可能な「製品」の性能にまだ満足していない付加価値活動へと移動する
  • モジュール化、標準化によって差異がなくなると、魅力的な利益は「顧客が十分以上に満足している活動」から離れていく
  • モジュール化とコモディティ化によって、魅力的な利益がバリューチェーンのある段階で消滅すると、通常は隣接する段階に、独自製品を通じて魅力的利益を得る機会が出現する
  • 製品とともに提供されるサービスも、類似のコモディティ化と脱コモディティ化のサイクルを経ることがあり、その結果、魅力的利益も移動する
  • 製品の機能性と信頼性が十分以上に良くなると、競争基盤が変化する
  • バリューチェーンの中で、新しい次元で卓越するための能力が決定される場所が、顧客とのインターフェースである
  • 顧客とのインターフェースを独自の方法で統合している企業は、十分でない次元において高い利益率を獲得できる

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