イノベーションへの解 第7章-16:破壊的成長能力を持つ組織とは

3. 新しい価値基準を作る

企業が新しい「価値基準(優先順位の判断基準)」を生み出す唯一の方法は、新しいコスト構造を持った新しい事業部門を設置することである。

組織は既存のコスト構造と比較して、より高い利益率を約束するイノベーションを優先してしまうため、自らを破壊することができない。したがって、新たな破壊的事業は、既存事業を存続する余力を十分残している間に始めなければならない。

破壊的事業は、初代製品の製造・販売においても採算が取れるように、新しいプロセスを生み出して、独自のコスト構造を構築できなければならない。新事業が主流事業のプロセスと間接費のうち、どれを受け入れ、どれを受け入れるべきでないかを判断するのは、新成長事業を構築するCEOの主な役割である。

「資源 – プロセス – 側値基準」の枠組みは、買収した組織を統合するという課題に取り組む上でも役立つ。

企業は「買収」を実行することで、買収した企業の「資源」「プロセス」「価値基準」を手に入れることができる。買収に際しては、これから買収する企業の価値の源泉は何か、また企業の価値は「資源」「プロセス」「価値基準」のどこから生み出されたのかを検討する必要がある。

もし買収した企業の成功要因が「プロセス」や「価値基準」にあるならば、その会社を新しい親会社に統合してはならない。統合で吸収された企業の「プロセス」や「価値基準」の多くが消滅してしまうからだ。「プロセス」や「価値基準」が成功要因であるならば、買収した企業を独立採算性にして、その「プロセス」や「価値基準」に「資源」を注入すべきである。

買収理由が企業の「資源」であるならば、親会社への統合に意味はある。買収した人材、製品、技術、顧客を親会社のプロセスに接続することで、親会社の既存能力を活用できるからだ。

成長機会に取り組む組織の経営者は、第一に、成功するために必要な人材やその他の資源があるかどうかを判断しなければならない。第二に、次の2つの質問に答える必要がある。

  • 組織で習慣的に用いられているプロセスは、この新しい課題にふさわしいのか?
  • 組織の価値基準は、この実行計画に必要な優先順位を与えるのか?

優良企業が、破壊的イノベーションでの成功率を高めるためには、機能別に構成された軽量級チームと重量級チームをそれぞれ適切な場合に用い、持続的イノベーションについては主流組織で商品化し、破壊的イノベーションは自律的組織に任せる必要がある。

企業は「安定企業特有の問題に取り組むために、精緻化されたマネジメント・スキルを備えた有能な人材」を活用することがある。このようなマネージャーは、新しい課題には適さない「プロセス」や「価値基準」のもとで業務を遂行しなければならない。企業は、新しい課題に合った「プロセス」や「価値基準」を持つ組織に、有能な人材を配置するようにしなければならない。検討する必要がある。

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