イノベーションへの解 第8章-9:戦略策定プロセスのマネジメント
経営幹部が「戦略的に重要である」と言ったところで、新事業のコスト構造が資源配分決定に及ぼす圧倒的な影響力には太刀打ちできない。経営幹部が注意深く気を配って、理想顧客からの注文でも儲けが出るようなコスト構造やビジネスモデルを構築しなければ、顧客を基盤とする事業を築くことはできない。
“組織の能力と無能力を支配するのは外部の存在である”、“顧客と投資家が組織の存続に必要な資源を提供する”という考え方を「資源依存」という。資源依存に対抗して変革をマネジメントする手段は、破壊的製品を高く評価する別の資源提供者に依存できるような、独立組織を構築することである。
意図的戦略と持続的イノベーションの世界では、大規模な既存企業は収益が実現する前に巨額の支出を行う。巨額の支出は瞬く間にコスト構造を定義し、知らぬ間にビジネスモデルが出来上がってしまう。そしてこのモデルが、魅力的な事業とそうでない事業を定義することになる。
新事業が単純な製品によって無消費に対抗する唯一の方法は「無消費のような顧客や製品を経済的に魅力あるものと捉えるコスト構造」を構築することである。大きな固定支出を最小限に留めることによって、生成期にある破壊的事業の血液とも言える、初期の小口注文を積極的に追求することができるようになる。
新事業が有効な戦略を見出す間に「発見志向計画法」を用いれば、試行錯誤を漫然と繰り返すよりも、有効な戦略をはるかに早く、かつ目的を持って生み出す手助けができる。