イノベーションへの解 第8章-11:戦略策定プロセスのマネジメント

発見志向計画法は、創発的戦略プロセスを積極的にマネジメントするための手段である。表8-1に示すように、発見志向計画法と意図的計画法では、段階の順序が異なる。

  • 第1段階:新事業の財務目標や成果予測を立てる。プロジェクトの損益や投資収益率に関する資料は1ページ程度でまとめてもよい。
     
  • 第2段階:仮説のチェックリストを作る。「財務予測が実現すると期待できるのは、どのような仮説が正しいと証明されたときか」を列挙し、最も重要なものから順番に列挙する。チェックリストには本書で示した理論に関連する仮説を含める。
     例1)ローエンド型破壊や新市場型破壊が可能か?
     例2)ターゲット顧客が仕事を片づけるために新製品を使うか?
     例3)新事業が会社をこれから金の向かう場所に導くか?
     
  • 第3段階:「意図的戦略の計画」ではなく「重要な仮説の妥当性を検証する計画」を実行する。この学習計画では、最も重要な仮説の妥当性を確認する、または無効にするような情報を、迅速かつなるべく費用をかけずに収集しなければならない。それができれば、イノベーターは第四段階が始まる前、つまり多額の投資を通じて戦略を実行する以前に、戦略の手直しができる。
     
  • 第4段階:第3段階で計画の有効性がはっきりした後で、戦略を実行するための投資を行う。

発見志向計画法を用いると「組織が要求する数字を実現するための計画には、それを裏付けるような妥当な仮説がない」ということが早い段階で判明する。妥当性がなければ、アイデアを有効な戦略にまとめることはできないだろう。あるいは、過度の急成長を要求しないような価値基準を持った小規模な組織にアイデアの実行を任せるべきかもしれない。 

有効な戦略が現れ、実行する時がきたならば、積極的に意図的戦略モードに切り替えて、創発的戦略への資金提供を中止しなければならない。

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